手紙やメールで使える季節(時候)の挨拶・結びの言葉を集めました。
3月は、春の訪れを感じる陽気や草花によって、明るい気分になる季節です。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、春の彼岸*を境に季節は夏へと向かいます。
*彼岸(ひがん):春分・秋分を中日(ちゅうにち)とし、前後各3日を合わせた各7日間
1. 3月 和風月名(わふうげつめい)
現在、一般的に使われている3月の和風月名は
『弥生(やよい)』
です。
弥生の由来
名前の由来は、草木がますます生い茂るという意味の「いやおい」が音変化して「やよい」になった、というのが定説です。
3月の異称(異名)
「弥生」以外にも数多くありますが、ここではその一部をご紹介します。
挨拶文中にこれらの異称を使っても、風情が感じられますね。
花月 (はなづき)
花見月(はなみづき)
桃月 (とうげつ)
桜月 (さくらづき)
夢見月(ゆめみづき)
嘉月 (かげつ)
春惜月(はるおしみづき)
2. 3月 時候の挨拶
3月の上旬から下旬にかけて季節は移り変わります。
手紙・メールを書いているのは、どのような時期なのか、季節に合うような言葉を選んでみてください。
2-1. ビジネスや目上の方への手紙など『改まった手紙・メール』の場合
季節の言葉に「~の候」「~のみぎり」「~の折」などをつけます。
- 浅春の候
- 孟春の候(もうしゅん:春の初め)※「孟」は初めの意。「孟春」は陰暦正月の異称でもある。
- 早春の候
- 浅香の候
- 春色の候
- 春暖の候
- 春雪の候
- 春情の候(しゅんじょう:春らしいようす 春めいてきた雰囲気)
- 雪解の候
- 春雨の候
- 仲春の候(ちゅうしゅん:春3か月の真ん中の意)※「仲春」は陰暦2月の異称でもある。
- 若草萌ゆる候
2-2. 『親しい方への手紙・メール』
- 日増しに春らしく
- 桃の三月
- 桜のつぼみも膨らみ
- 春色とみに濃く
- 寒さも緩み
- 日増しに暖かさを増し
- 野山に春の色が濃くなり
- 木々の緑日ごとに色めく季節
3. 3月 挨拶例文
3-1. ビジネスや目上の方への手紙など『改まった手紙・メール』の場合
- 春暖の候、皆様には益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 春暖の候、貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 春情の候、皆様には益々ご健勝のほどお慶び申し上げます。
- 雪解の候、貴社益々ご健勝の程お慶び申し上げます。
- 孟春の候、ますますご発展の程お喜び申し上げます。
- 春色のみぎり、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 浅春の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
- 若草萌ゆる折、〇〇様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
- 時下益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
日頃お世話になっている方へは、季節の挨拶文の後に次のような一文を添えても良いでしょう。
- いつも一方ならぬお力添えにあずかり、誠にありがとうございます。
- いつも一方ならぬお力添えにあずかり、誠に有難う存じます。
- いつも格別なお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
3-2. 『親しい方への手紙・メール』
親しい方へは、季節の挨拶として、季節を感じるような身近な出来事を書くと良いでしょう。
読んだ相手があなたの情景を思い浮かべられ、より親しみを感じてもらえることでしょう。
- 日増しに春らしくなって参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。
- 紋白蝶(モンシロチョウ)が花の上を舞っています。
- 早いもので二月堂の御水取*の季節となりました。
- ひな祭りはもう明日というのに、雪が降り積もっています。北国の春はまだまだ遠いようです。
- めっきり春らしくなってまいりましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
- 一雨ごとに春の陽気をましてまいりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
- 暑さ寒さも彼岸までと申しますように、過ごしやすい季節となりました。
- 天も地もすっかり春のよそおいとなりました今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
*東大寺二月堂で行われる「修二会」という行法(仏道の修行方法。特に密教の修法)
※参考文献・Webサイト
・国立国会図書館『日本の暦』「和風月名」https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s8.html
・国立国会図書館デジタルコレクション「古今年中行事通」https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1444228
・goo国語辞書(小学館提供『デジタル大辞泉』)https://dictionary.goo.ne.jp/jn/
・杉本裕子 2021年「季節と気持ちを上手に伝える 手紙の書き方マナー&文例集」主婦の友社
・水野久美(文) 森松輝夫(絵) 2020年「絵で楽しむ 日本人として知っておきたい二十四節季と七十二候」 (株)KADOKAWA