手紙やメールで使える季節(時候)の挨拶・結びの言葉を集めました。
9月は、秋の気配を感じる頃です。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、秋の彼岸*を境に季節は冬へと向かいます。
*彼岸(ひがん):春分(3月21日頃)・秋分(9月23日頃)を中日(ちゅうにち)とし、前後各3日を合わせた各7日間
1. 9月 和風月名(わふうげつめい)
現在、一般的に使われている9月の和風月名は
『長月(ながつき)』
です。
長月の由来
名前の由来は、9月から夜がたんだんと長くなっていくため「夜長月(よながつき)」の意味という説や、稲刈月(いなかりつき)の「い」と「り」を除いた「なかつき」など、諸説あります。
9月の異称(異名)
「長月」以外にも数多くありますが、ここではその一部をご紹介します。
挨拶文中にこれらの異称を使っても、風情が感じられますね。
菊月 (きくづき)
菊咲月(きくざきづき)
寝覚月(ねざめづき)
夜長月(よながつき)
玄月 (げんげつ)
紅葉月(もみじづき)
色どる月/色取り月/彩り月*
稲刈月(稲刈月)
*:木の葉が色づく月の意から
2. 9月 時候の挨拶
9月の上旬から下旬にかけて季節は移り変わります。
手紙・メールを書いているのは、どのような時期なのか、季節に合うような言葉を選んでみてください。
2-1. ビジネスや目上の方への手紙など『改まった手紙・メール』の場合
季節の言葉に「~の候」「~のみぎり」「~の折」などをつけます。
- 初秋の候
- 秋涼の候
- 新秋の候
- 新涼の候
- 秋冷の候
- 孟秋の候
- 秋色の候
- 稲妻の候
- 野分の候(のわけ:野の草を風が強く吹き分ける意 秋から冬にかけて吹く暴風 特に二百十日*・二百二十日*前後に吹く台風)
- 台風の候
- 秋晴の候
- 爽秋の候
*「二百十日」(立春から数えて210日目、9月1日頃)は、台風襲来の時期で、稲の開花期にあたるため、昔から「二百二十日」(立春から数えて220日目、9月11日頃)とともに農家の「厄日」とされる。
2-2. 『親しい方への手紙・メール』
- 野山もにわかに秋色を帯び
- 虫の音美しい
- 秋の気配が次第に色濃くなって
- 台風一過
- 新秋快適のみぎり
- 爽やかな季節を迎え
- 朝夕はめっきり涼しく
- 二百十日も無事に過ぎ*
- 厄日の候*
*「二百十日」(立春から数えて210日目、9月1日頃)は、台風襲来の時期で、稲の開花期にあたるため、昔から「二百二十日」(立春から数えて220日目、9月11日頃)とともに農家の「厄日」とされる。
3. 9月 挨拶例文
3-1. ビジネスや目上の方への手紙など『改まった手紙・メール』の場合
- 初秋の候、皆様には益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 初秋の候、貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 秋涼の候、皆様には益々ご健勝のほどお慶び申し上げます。
- 新秋の候、貴社益々ご健勝の程お慶び申し上げます。
- 秋冷の候、ますますご発展の程お喜び申し上げます。
- 野分のみぎり、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 秋晴の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
- 爽秋の折、〇〇様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
- 時下益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
日頃お世話になっている方へは、季節の挨拶文の後に次のような一文を添えても良いでしょう。
- いつも一方ならぬお力添えにあずかり、誠にありがとうございます。
- いつも一方ならぬお力添えにあずかり、誠に有難う存じます。
- いつも格別なお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
3-2. 『親しい方への手紙・メール』
親しい方へは、季節の挨拶として、季節を感じるような身近な出来事を書くと良いでしょう。
読んだ相手があなたの情景を思い浮かべられ、より親しみを感じてもらえることでしょう。
- いまだ暑さが残ります今日この頃
- 残暑ようやく衰え
- 朝晩は幾分しのぎやすくなってまいりました。
- コスモスが秋風に揺れる頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
- 早いもので軒下の燕が帰り支度を始めました。
- 天高く馬肥ゆる秋、秋刀魚(さんま)の煙が食欲をそそります。
- 今年はことのほか秋の訪れが遅く、秋日照りに悩まされています。
- 今年初めての野分が吹き荒れ、萩の花も倒れたままです。
- ふもとはまだ秋の盛りですのに、富士山には初冠雪が見られます。
- 豊かな実りの秋となりましたが、皆様にはいつもながらお変わりなく何よりに存じます。
- 十五夜の月も皓々として冴えわたり、秋気いよいよ増す頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
- 一雨ごとに秋の気配が深まってまいります。
- 二百十日も穏やかに過ぎ、野山もめっきり秋めいてきました。
※参考文献・Webサイト
・国立国会図書館『日本の暦』「和風月名」https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s8.html
・国立国会図書館デジタルコレクション「古今年中行事通」https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1444228
・goo国語辞書(小学館提供『デジタル大辞泉』)https://dictionary.goo.ne.jp/jn/
・杉本裕子 2021年「季節と気持ちを上手に伝える 手紙の書き方マナー&文例集」主婦の友社
・水野久美(文) 森松輝夫(絵) 2020年「絵で楽しむ 日本人として知っておきたい二十四節季と七十二候」 (株)KADOKAWA